独学ピアノ10年の成果

 10年前、娘のために電子ピアノを買ったのをきっかけにピアノ演奏に興味をもち、ピアノ練習家となった。10年間の成果といえる最大のものは、時間を十分費やす練習を持続できたこと。努力そのものが成果だなんて、きっと笑われてしまう。だけど、僕にとってこの努力は、これまでの人生で経験のないほどで、そう簡単には実現しないことだし、2022年1月になったら達成感すら覚えたので成果といってよいかもしれない。

 1日の練習時間は、平均すると3時間ぐらい。ということは、1万時間を超えていることになる。このどこかできいた「1万時間」は、誰が言い出したんだろう。いい事言うな~。僕のひねくれた解釈は、指導者に媚びて盲従するのは重要ではない、となる。重要なのは練習。

 着手した作品は、どれも、最初は弾けなさそうと思うほど難しいと感じた。ところが、練習を進めていくと、ある部分が難しければ難しいほどそれに囚われて執拗にやってしまい、ハードル感は徐々に弱くなっていった。それは、弱くなったかと思えば強くなるという波があって、波が収束しながら弱くなっていった、といったほうが適切だろう。この10年、休日はもちろんのこと、平日の早朝も仕事後も「それに囚われて執拗にやって」しまったのは、たぶん、不安な気持ちを打ち消すためだ。これは「努力」というより、病的な症状だろうか。そういう変な精神状態だと、生活や仕事に支障が出そうだが、ピアノ練習ではそれが良かったのか、不安な気持ちの根源である難所に対処するのは当たり前で、後退せずにブレークスルーしてきた気がする。

 お風呂に入ってるときとか、健康な指がちゃんと10本揃っているのを改めて自覚すると、たったそれだけで安堵する。指に関するそのような意識は、ピアノを始める前は全然なかったけど、今は強すぎるぐらいあるのだ。